
したものとして、さまざまな問題を全面的に行政に委ねるという態度ではなく、また行政に対して虚無感を抱いているわけでもなく、市民の行政に対する幻想が崩壊し、行政の等身大の姿が見えてきたことが指摘されている点は重要である。 つまり、これまで日本社会に欠如していた市民と政府、市民と行政の関係を根本から問い直すような問題提起が市民活動には含まれているということである。ここでは、市民が行政を自己と同じ政策主体の1つとしてとらえ始めたことが指摘されているが、まさに「公共サービスの多元化」という問題提起が行政に対して突きつけられているのである。 川崎市では、この報告書と平行して、庁内の市民活動に関する研究会を行っていく一方で、市民活動支援政策についての研究会を引き続き行っている。ここには、市民活動を積極的に位置づけていこうという行政サイドの意欲が生まれてきていることがある。 ここでは、東京都と川崎市における検討作業についてみたが、他にも大阪圏での作業などもあり、行政サイドで積極的にこの問題について取り組もうという気運がある、繰り返しになるが、こうした検討作業が決して行政の下請けとして市民活動を利用しようとするためのものであってはならず、あくまでも協働関係を進めるものとして位置づけられねばならないだろう。 (2) 自治体による市民活動支援の現状 このような調査・研究活動にとどまらず、地方自治体による市民活動支援については、既にいくつかの自治体で試行錯誤が進められている。ここでは、いくつかの事例をふまえて、その現状と市民活動支援をめぐる論点を検討してみたい。 (a) 活動の場の提供 市民活動にとって、活動の場を確保することは2つの意味で簡単なことではない。1つは、事務所や会議室等を確保するといっても、大都市圏を中心に料金が高く、多くは活動資金を持ち出している市民活動団体にとってその負担が大きいことがある。2つ目には、事務所などの活動場所を確保しようとしても、その賃貸契約に際しては法人格が必要なため、法人格をもっていない圧倒的多数の市民団体では、団体の代表者など個人が契約を行わなければならないために、そのリスクを個人が負わねばならないことになる。 そういった市民活動による活動場所の確保のために地方自治体はどのような支援方策をとるべきであろうか。そうした要請に応えるための施策として参考になるのが神奈川県による県民活動支援センターの例であろう。
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